2008 年
10 月
3 日
秋の海 秋野不矩展
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議会が終わり、今日は仕事休みの日にする。秋晴れのなか、葉山まで出かける、念願の秋野不矩の絵をみるために。 逗子駅からバスで海岸線に沿って神奈川県立近代美術館まで。逗子は妹が住んでいたところで街並みも懐かしく、また日影茶屋など夫とドライブがてら立ち寄ったことも思い出す。
美術館から海に下りる。葉山の海と空、漣立ち、秋の陽光にきらめく海。砂浜を踏み、ひさしぶりの深い呼吸。
秋野不矩、生誕100年という。平筆と岩絵具、93歳で亡くなるまで絵筆を握った人、50歳を過ぎてからインドの風土に出会い「描きたいものがちゃんとそこにあった」という幸せな邂逅が導くしごと。 人物の描写も普遍的な本質への追及がなされ、一歩引いた目線の先に、なんともいえぬ慈愛が宿る。 圧倒的なのは、やはりインドの地を描いた後年の作品。崩れ落ちそうな柔らかなテラコッタの日干し煉瓦の廻廊にさす光と陰、照りつける陽ざしと廻廊の中の温度の差。日本の風土には見出せないであろう、土の家のおおらかな曲線と大地に溶け込む色、祈りのこめられた壁。 黄色い土色の大河を渡り往く水牛の群れ、驟雨をよぶ雨雲。大地と生命力に溢れた祈りの地が展開する。後ろに引いてみると、対象を超えたものの本質と、くっきりとした奥行き、作家の精神の迫力といったものをみる。
秋野不矩を心ゆくまでみた久々の満ち足りた心持ちで、海を臨むオランジュ・ブルゥという美術館のレストランで遅い遅い昼ごはんをとる。 秋の陽ざしを浴びてゆっくり暮れ往く海を眺めながら、雲の色と造形、空を舞う鳶、行き交う小舟と盛り上がるような水平線を見ながら思う。私たちもまた「幸せの邂逅」によって生きていることを。(大塚恵美子)
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