2008 年
4 月
3 日
フィレンツェの思い出など
〜東郷光子夫妻の「ふたりでフィレンツェ」を手にして〜
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今日は図書館で偶然一冊の赤い本に目がいった。数ヶ月前に新聞の記事で目にした「ボンジョルノふたりでフィレンツェ」だった。ご無沙汰しているが、市内の知人の東郷さんとおつれあいのお2人のスケッチと文で綴ったすてきな本にやっと会えた! 3年くらい前にお目にかかった時、お嬢さんの暮らすフィレンツェの話をしていらして、1999年から折々に訪ねられたフィレンツェの「肖像」をまとめられたものだとわかる。 早速借りて、待ちきれず、近くのファミリーレストランに入り、開く。最初のスケッチは、小高い丘のミケランジェロ広場から眺めるフィレンツェのまちだ。ああ、この景色だ。フィレンツェを思い浮かべる時に、真っ先に浮かぶ風景そのものだ。光子さんの文章も、てらいがなく、余韻があり、気持ちに馴染む。
鮮やかに思い出すフィレンツェは1992年のちょうど今の季節。16年前か。夫と春休みの娘と3人で訪ねたまち。4、5日ではあったけれど、忘れがたい。ある午後に降った柔らかい雨、ルネサンスの時代からの濡れた石の舗道、雨をよける仕草の夫の笑い顔。 ローマのテルミニ駅から列車で着いたサンタマリア・ノベッラ駅。泊まったホテルの私のベッドからサンタマリア・ノベッラ教会の鐘楼が見え、鐘の音が聴こえる。ほどよい奥行きの美しいまちフィレンツェは、角を曲がると赤いレンガとピンクの肌の大理石のドゥオモやメディチ家ゆかりの聖堂や礼拝堂にぶつかり、ウフィッツイ美術館、市役所として使われているベッキオ宮殿などがぎゅっと凝縮された、山に囲まれた盆地である。ミケランジェロの仕事に圧倒され、夫の好きなボティチェリの「春」、ダ・ヴィンチの「受胎告知」、修道院の漆喰の壁に描かれたフラ・アンジェリコの「受胎告知」など鮮やかに浮かび、その時の気温や匂いまで思い出すように思うのだ。 ある一日は、夫が前の晩のグラッパだかワインだかの飲みすぎで横になっていたい、ということで、娘とふたりで出かけた。市場をひやかし、フォッカッチャを仕入れ、ベッキオ橋をわたり、ピッティ宮殿を越え、起伏に富んだボボリ庭園を散策した。背の高い樹々に覆われた林、鳥の声。まちが望める高台、噴水のある広場。帰りがけに寄ったおもちゃ屋やあちこちにいる猫たち、娘の笑い声「おとうさんも来ればよかったのにね」。 ローマに帰る日は、春のストライキにぶつかり、大幅にダイヤが乱れ列車がやって来ない。と思うと急なアナウンスで列車が入り、3人で走り、間に合う!予約してあったコンパートメントは他のイタリアの人たちもごっちゃに入り、賑やかにローマへ戻った、確かナポリの人たちだったような。そんなことをいっぱい思い出す。 思い出の始まりと終わりは、アルノ河を渡り、路をかえて2回登ったミケランジェロ広場からの眼の下に広がるフィレンツェのまち、菫色に佇む。東郷さんのフィレンツェもまた。
リアルタイムの夕方に、偶然出会った友人たちと久しぶりのお喋りを楽しむ。帰り際に、ミモザの花をお裾分けしていただく。自転車のかごいっぱいに春を乗せる。午前中は役所でしっかり仕事をしたし、全くすてきな春の午後だったわ。(大塚恵美子)
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